男着物の基本・大島紬② 大島なら泥染め・藍色の亀甲柄 ~男着物・3年目の着物道楽 その5~

◎大島を選ぶなら泥染め・藍色の亀甲柄
 いきなり結論からで恐縮ですが、男着物として大島を1点だけ選ぶとすれば、「泥染めの黒の地色に藍色の亀甲柄が織られた大島」がもっとも代表的だと思います。
 亀甲柄は、鶴は千年、亀は万年に象徴されるように長寿を表す古典的な吉祥柄です。反物の幅に織られる亀甲数の数によって、80亀甲、100亀甲、120亀甲、、、200亀甲と種類があり、数が大きくなるほど亀甲の大きさが小さくなり、つまり細かい柄になるので高級になります。最も廉価なものはベースの80亀甲ですが、いずれでも遠目では無地に見えるものなので、技術の高さに敬意を払いつつ、通常は80亀甲や100亀甲で十分、むしろ100亀甲でも現在では高級とされてくるようになってきたようです。

〈私の泥大島・100亀甲〉 SIGMA DP2 Merrill
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◎結城紬との違い
 下の写真はツマの結城紬の亀甲柄。このツマの着物は全面に2色の亀甲柄が入った非常に手間が掛かるものですが、結城と大島の特長の違いが分かりますでしょうか。結城紬は、紬の代表格。2頭以上のお蚕さんが一つの繭を作る玉繭から本真綿を作って、その真綿から糸を引く作業により作られる紬(つむぎ)糸は、太さが均一ではなく、ところどこに節ができるのが特徴で、それ故に、出来上がった着物にはほっこりした生地の風合い、暖かみがあります。大島と比べると深み、味わいといったところで結城ならではという点があります。

〈結城紬の亀甲柄〉
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◎大島はシャープさ、クールさ
 今の大島は紬ではなく生糸(本絹糸)を使うので紬のような節もなく、ツヤがあり手触りに薄い生地だなという感触があります。
 大島は、着た時にしなやかに身体に寄り添い、絹らしい繊細な感触に包み込まれる感じがなんとも極上な気分にさせてくれます。結城好きの私でも、大島を着ると、あぁ大島はやっぱりいいなぁと思います。そしてまた結城に戻ると、優しくふわっとした感じ、深みのある生地感に結城がやっぱり好きだとなる、、、このどちらも非常に特徴が違うので、大島の良さが分かる人には結城の良さが分かるはずです。 
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◎ ジャパンブルーの藍
 ところで大島といえば、まずは藍の亀甲に限る、という風に思うのは結城もそうですが、もともとの染色技術の由来にあります。大島は、シャリンバイを煮込んだ液に染めた糸を泥田に浸けることで得られる漆黒の泥染めがベースで、その上に描かれる亀甲などの柄は藍色で表現されるものが多く見られます。琉球藍による藍染めのものもあります。結城紬の藍色は、徳島県名産の藍が明治時代に広がった藍染が元で、やはり藍色の着物が基本的なものと思えます。落語で覚えたのですが染色屋さんは、藍染めをしていたことから「紺屋(こんや)」さんと呼ばれていたんですよね。「紺屋高尾」は私の好きな古典落語の演目ですが、花魁の高尾太夫と染色の職人=紺屋の恋物語なので紺屋高尾。そもそも明治時代、日本に来た欧米人が日本には藍色のものが多いことに驚いて藍染めの青を「ジャパンブルー」と呼んだことから、この藍が日本を代表する色になっていった訳ですし。

〈川崎市にある日本民家園では、藍畑で藍を栽培し、自前の藍で藍染め工房を運営しています。〉 SIGMA DP1 Merrill
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◎大島を大別する奄美大島産と鹿児島市産
 大島は奄美大島で生まれ育ったものですが、その発展の歴史の中で明治7年には鹿児島本土に技術が伝えられたそうで、鹿児島市産のものもあります。私は今大島を4着持っていますがリサイクルの大島・100亀甲と夏大島はリサイクル故に産地が分かりませんが、夏大島は琉球藍による藍染めや「もじり織り」(縦糸をよじることですかしを作る織り方)による手織りのもので、奄美産かなと思っています。100亀甲の方はよく分かりませんが泥染は奄美大島でないと出来ません。

〈琉球藍のもじり織りによる夏大島〉
  柄のように見えますが、織り方によって透かしが出来ている涼やかな着物です。
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◎鹿児島本土産の大島
 残り2着は反物を買って誂えたものなので手元に証紙があり、両方とも鹿児島市産です。

〈最初の大島〉
 横糸にだけ絣糸を使い、合理化することでコストを下げたものです。
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そんな機械織り大島については、今日は時間切れなので次回に。

by bjiman | 2015-12-03 02:43 | 和装・着物生活・伝統的工芸品
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