「アナと雪の女王」~ 'Let it go' を楽しんで~②

第2幕 戴冠式 ~That perfect girl is gone~
戴冠式。閉ざされていた城の門が開く緊張のとき。アナとエルサは対照的な気持ちでこの時を迎えます。
私が考える ’第2幕’ は、お城の門が開く戴冠式から、王だったお父様から期待された「完璧な長女=女王」の役割を果たせずに、心の中で ’Let it go’ と叫びながらNorth Mountain に氷の城を築いて閉じこもってしまうところまで。
この気持ちの揺れが、この映画の主題のひとつではないかと思います。

Conceal, don't feel, don't let them know
’Let it go’ という曲がどんな曲なのかな、と考えようとすると、その前にある 'For the First Time in Forever' と、その後にある 'For The First Time In Forever (Reprise)' を対比して見た方がより興味深いと思います。
'For the First Time in Forever' の中で、エルサは、彼女を支配していたお父様との約束を呪文のように繰り返します。「誰も入れてはいけない、誰にも見せてはいけない、いつもいい子でなくてはいけない、隠さなくては、感情も、、、」なぜならば、「Make one wrong move and everyone will know」。一つ間違えば、皆(国民)に知られてしまうから。
'For the First Time in Forever' の最後、戴冠式の始まり、開門を命じるのは女王である彼女自身にしかできないことだから、そのストレスの高まりを、「誰も入れてはいけない、誰にも見せてはいけない、いつもいい子でなくてはいけない、隠さなくては、隠さなくては、感情も、知られてはならない」と繰り返すことで表しているように感じました。
また、それは長女として彼女が抱えてきたストレスでもあるのでしょう。彼女は、そんな気持ちを、But it's only for today(今日だけだ)と言い聞かせています。

Well now they know let it go, let it go
しかし、彼女は、only for today を無事に終えられませんでした。彼女がずっと守ってきたこと=Don't let them in,
don't let them see/ Be the good girl you always have to be/ Conceal, don't feel は、すべて 「’don't let them know’=知られてはいけない」のためだったのに、国民の目の前で氷を作るパワーを見せてしまい、「モンスターだ」と言われてしまいます。王様であった父との約束を守れなかった、長女として期待された役割を演じきれなかった、、、雪と氷を作り出す自分のパワーが本当は好きだったのに、その気持ちさえも抑えてきた、、、「don't feel」は、感情=氷と雪のパワーをも意味するのだと思いますが、彼女にとっては、パワーをコントロールできないこともストレスになったということだと思います。その思いが、Let it go というワードになったのでしょう。
そう考えると、Let it go は、「もういい、もうできない!」というニュアンスではないかと思います。

’Can't hold it back anymore’=もう我慢できない
’Turn away and slam the door’=背を向けてドアを閉めるのよ。
’I don't care that they're going to say’=誰が何を言っても、もう気にしない
は、彼女のストレスが極限に達してしまった気持ちを感じさせます。Let it go は、一種のescape 。
彼女は、
’That perfect girl is gone’ 完璧な女の子(=理想の長女、という感じでしょうか)はもういない。
The cold never bothered me anyway! と言って氷の城のドアを固く閉ざします。心も。

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エルサの魔法について
エルサの持つ「力」をどのように理解すれば良いのか、ずっと考えていました。
Let it go の歌詞のうち、特に訳しがたいのは、’Let the storm rage on’ なんじゃないかと思います。
この設定は、サーミ人の精霊信仰が背景になっているんだと思いますが(知見がないので、こちらで参照して下さい。)、精霊=あらゆる力、という風に捉えるのではないかと思いました。
私の好きなギリシア神話の神々たちは、ゼウスのように大神として擬人化される場合もありますが、「ある存在」を表す意味もあります。例えばゼウスは大神でもありますが、「稲妻」でもあります。特にティタン神族の中には、「エオス=曙」「ヘリオス=太陽」「セメレ=月」というように、「その存在そのもの」の神もいます。また、「ムーサ」は「MUSIC」の語源ですが、音楽の妖精たちです。音楽を司る神といういい方もありますが、「音楽そのもの」「音楽という存在」という風に捉えた方が理解がしやすい。心地よい音楽のそばには、いつもムーサ達がいる、、、私はいつもそんなように感じています。ゼウスは、人間の恋人にそのままの姿を見せてとねだられ、その姿を見せたところ、ゼウスは「稲妻」なので、恋人は感電して死んでしまいます。
エルサのパワーはそういうもの、私は、エルサは「氷」、あるいはエルサの内側に、「氷という存在(精霊)」が同居しているというふうに捉えています。

I am one with the wind and sky=私は風になり空になる
My power flurries through the air into the ground=私の力が大地への空気を通じて突風となる
My soul is spiraling in frozen fractals all around=私の魂は、凍った多面体となってらせん状に昇っていく
And one thought crystallizes like an icy blast=ひとつの想いが、氷の爆風のように結晶化する
という部分(訳は合っていないかもしれませんが。)、は、エルサの想いが氷の城を築きあげるところですが、彼女が「氷という存在」を内在していることを表しているように思います。
’Let the storm rage on’ を考えるヒントは、次の'For The First Time In Forever (Reprise)'の中の
’No escape from the storm inside of me!’
という歌詞の中にあったように思いました。

第3幕は、次回。

2015.1.31 bjiman


by bjiman | 2015-01-31 23:09 | ディズニーに夢中
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