プロメテウスの火 

札幌では、大きな川の上などによくトビ(鳶)が悠々と飛翔している姿が見られました。 (2008.5.10 札幌市・モエレ沼公園近くのモエレ川にて) (Pentax K10D/Pentax DA18-250mmF3.5-6.3,250mm,1/500秒)
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トビはもっとも身近に見られる猛禽類ですが、レンズごしに見える表情はやはり猛禽類そのもので怖いですね。
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今日はギリシア神話の中でも有名なお話のひとつ、「プロメテウスの火」です。

ギリシア神話では、人間はティタン神族のプロメテウスが作った人形に大神ゼウスが息をかけて生命を入れたものとされています。プロメテウスは自分に似せて人形を作ったので最初の人間は男性だけでした。
プロメテウスは人間に文字や色々なことを教えよく面倒を見たので、人間はあっという間に増え、最初は賑やかに平和に満ちていた、と言われます。
しかし地上に増えた人間はと段々と傲慢になったのでゼウスは、火を取り上げてしまいました。
火を失って寒さに震える人間のためにプロメテウスは天上の火を盗んで人間に再び「火」を与えました。人間はその火によって文明を得たとされています。これが「プロメテウスの火」です。

しかしゼウスの意に反して天上の火を盗んだのでプロメテウスはゼウスに罰せられ、断崖絶壁のカウカサス山の山頂にはりつけられました
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はりつけられたプロメテウスのもとには、ゼウスに命じられた鷲が飛んできて、プロメテウスの肝臓をついばんでいきます。プロメテウスは不死の神なので、つばまれた肝臓は再生されますが、翌日には再び鷲が飛んできて再生された肝臓をまたついばむ。この繰り返しがゼウスの刑であり、刑期は3万年とされていました。
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「プロメテウスの火」はこういうお話です。
この後、ゼウスは再度人間を懲らしめるために、今度は「女性」を作って人間に贈り、その女性(パンドーラ)が箱を開けることによって厄災が人間を覆うことになるので、さきのプロメテウスの火と併せて、文明を得た人間は、同時に、厄災が覆う世界の中で希望だけを頼りに生きていかなければならなくなりました。

一度は人間から火を取り上げたゼウスが、なぜプロメテウスが与えた火を取り上げなかったのかは?ですが、「プロメテウスの火」が、文明と同時に厄災へと繋がっていくという点でとても興味深い物語です。

人間はプロメテウスの火で文明を起こしましたが、同時に武器や恐ろしいものも作って争いを起こし、厄災を引き起こしてもきました。
その意味で「プロメテウスの火」は様々に解釈され、しばしば原子力は「第二のプロメテウスの火」と例えられます。NASAの宇宙での原子力推進計画は「プロメテウス計画」という名前だったそうです。

プロメテウス(あらかじめ考えている者)は、しばし先見性のある者との意味にも解されます。そのプロメテウスが弟のエピメテウスに「ゼウスの贈り物には気をつけろ」と忠言するシーンが印象的だと書きました。
トロイア戦争でギリシア軍が考え出した「トロイの木馬」は、現代のパソコンウイルスソフトのウイルスパターン名にも使われています。「敵(からの贈り物)が、実は敵そのものであって、内部に潜んで忍び込み、相手を滅ぼすという形態から名付けられたものですが、こうした現象を前にソフトの技術者が「これはトロイの木馬じゃないか」と思いつくこと自体、欧米ではギリシア神話が現代に生きている証のひとつです。
トロイの木馬の物語は、しばし「外国からの贈り物には気をつけろ」という例えに引用されます。
欧米人の思考の中に息づく「古代ギリシア人の知恵」に思いを馳せてみるのも興味深いものです。

2011.11.14
by bjiman | 2011-11-14 01:33 | ギリシア神話が好き
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