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2015年の年の瀬に

今年もお世話になりました。
〈戸定邸(旧徳川昭武邸〉にて〉 SIGMA DP2 Merrill
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 2015年もあっという間に年の瀬を迎え、我が家でも慌ただしく新年の準備に追われています。
「男着物・3年目の着物道楽」を書いている途中に12月に入り仕事もそれ以外も多忙になってしまい、記事が途中になってしまいましたが、新年に入ったらまた再開したいと思っていますのでよろしくお願いします。
 私にとって、2015年は出会いの年でした。年を重ねたせいか、旧友との再会の機会も増え、また、ちょっとした偶然から町会の役などもやらせていただき、お祭りやお餅つきなどの伝統的な行事などにも触れ、改めてその神事としての意味を知ることができたのは良い機会でした。
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 2015年は、世の中もずいぶん慌ただしく変動した年だったと思います。
 インターネットによる圧倒的な情報量が溢れる一方で、物事をしっかり考えるということがややもすると出来にくくなってきたように感じ、本を読む時間を増やそうということを意識するようになりました。年を重ねれば重ねるほど、自分の無知を知ることになり、若い人から教えられることも増えました。
 テレビや新聞などでは連日、喧しい議論がなされていますが、クルマジャーナリズムの記事でも触れたように、議論に複眼的な視点が欠けていると感じられる機会が多くありました。どんな物事にも多面性があり、ある面から見ればそう見えても、それを裏から見れば違う視点になることが往々にしてあるものです。この頃は地位のある方がおよそ耳障りのよくない発言をされたりすることがありますが、思い起こせば学生時代、私たちが最も重んじていた様式は、自由な議論ということであったように思います。旗幟を鮮明にすることも大切なことだと思いますが、読む人、聞く人の立場も考えてバランスのよい考え方をもっと大事にして欲しい世相だと思います。

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松戸市にある二十一世紀の森と広場という公園は、この地域に豊富にある湧き水を活かした心地よい空間です。
もっとも多いエリアでは1日770トンもの水量がわき出しているとのことであり、ひとつひとつの流れは小さくても絶えずわき出す清水は、私たちの生活を麗し、絶えることのない時の流れを感じさせてくれます。
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写真家・大西みつぐさんのムック「ほのぼの旅情カメラ」は、もともとは「水景譜」というタイトルで雑誌に連載されていた記事をまとめたもので「水」がキーワードになっています。水に誘われて短い旅をする、、、そんなスタイルに惹かれて、今年は何度か養老渓谷を訪れました。
穏やかな気持ちではなかなかいられない日常であるからこそ、清らかな水の流れと心地よく吹き抜けていく風のある森林空間に身を置いて、心身の健康を保ちたいという風に考えていました。

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 白洲次郎さんの著作集「プリンシプルのない日本」の寄稿の中で作家の辻井喬さんは、「私は、風とは自由であり、水と共に我が国の美意識の源なのだ」と書かれていましたが、私もそのように思います。
 また、方丈記に「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」とあるように、絶えず流れゆく時の流れの前には、一人一人の存在など所詮小さなものであるようにも思います。
 流れゆく清水には、様々なことを洗い流し、新たにしてくれる力があるようにも思います。「水に流す」は私たちの美意識のひとつです。それは、「ノーサイド」のルールに見られるように、ひとつひとつにけじめをつけて前を向いていく考え方にも共感するものです。
 清水の絶えない流れのように、自分も心を磨き、新たにして、飛躍する新年にしたいと考えています。
 来年もどうぞよろしくお願いします。


2015.12.31 bjiman

by bjiman | 2015-12-31 14:08 | ご挨拶・お礼 | Comments(0)

男着物の基本・大島紬② 大島なら泥染め・藍色の亀甲柄 ~男着物・3年目の着物道楽 その5~

◎大島を選ぶなら泥染め・藍色の亀甲柄
 いきなり結論からで恐縮ですが、男着物として大島を1点だけ選ぶとすれば、「泥染めの黒の地色に藍色の亀甲柄が織られた大島」がもっとも代表的だと思います。
 亀甲柄は、鶴は千年、亀は万年に象徴されるように長寿を表す古典的な吉祥柄です。反物の幅に織られる亀甲数の数によって、80亀甲、100亀甲、120亀甲、、、200亀甲と種類があり、数が大きくなるほど亀甲の大きさが小さくなり、つまり細かい柄になるので高級になります。最も廉価なものはベースの80亀甲ですが、いずれでも遠目では無地に見えるものなので、技術の高さに敬意を払いつつ、通常は80亀甲や100亀甲で十分、むしろ100亀甲でも現在では高級とされてくるようになってきたようです。

〈私の泥大島・100亀甲〉 SIGMA DP2 Merrill
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◎結城紬との違い
 下の写真はツマの結城紬の亀甲柄。このツマの着物は全面に2色の亀甲柄が入った非常に手間が掛かるものですが、結城と大島の特長の違いが分かりますでしょうか。結城紬は、紬の代表格。2頭以上のお蚕さんが一つの繭を作る玉繭から本真綿を作って、その真綿から糸を引く作業により作られる紬(つむぎ)糸は、太さが均一ではなく、ところどこに節ができるのが特徴で、それ故に、出来上がった着物にはほっこりした生地の風合い、暖かみがあります。大島と比べると深み、味わいといったところで結城ならではという点があります。

〈結城紬の亀甲柄〉
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◎大島はシャープさ、クールさ
 今の大島は紬ではなく生糸(本絹糸)を使うので紬のような節もなく、ツヤがあり手触りに薄い生地だなという感触があります。
 大島は、着た時にしなやかに身体に寄り添い、絹らしい繊細な感触に包み込まれる感じがなんとも極上な気分にさせてくれます。結城好きの私でも、大島を着ると、あぁ大島はやっぱりいいなぁと思います。そしてまた結城に戻ると、優しくふわっとした感じ、深みのある生地感に結城がやっぱり好きだとなる、、、このどちらも非常に特徴が違うので、大島の良さが分かる人には結城の良さが分かるはずです。 
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◎ ジャパンブルーの藍
 ところで大島といえば、まずは藍の亀甲に限る、という風に思うのは結城もそうですが、もともとの染色技術の由来にあります。大島は、シャリンバイを煮込んだ液に染めた糸を泥田に浸けることで得られる漆黒の泥染めがベースで、その上に描かれる亀甲などの柄は藍色で表現されるものが多く見られます。琉球藍による藍染めのものもあります。結城紬の藍色は、徳島県名産の藍が明治時代に広がった藍染が元で、やはり藍色の着物が基本的なものと思えます。落語で覚えたのですが染色屋さんは、藍染めをしていたことから「紺屋(こんや)」さんと呼ばれていたんですよね。「紺屋高尾」は私の好きな古典落語の演目ですが、花魁の高尾太夫と染色の職人=紺屋の恋物語なので紺屋高尾。そもそも明治時代、日本に来た欧米人が日本には藍色のものが多いことに驚いて藍染めの青を「ジャパンブルー」と呼んだことから、この藍が日本を代表する色になっていった訳ですし。

〈川崎市にある日本民家園では、藍畑で藍を栽培し、自前の藍で藍染め工房を運営しています。〉 SIGMA DP1 Merrill
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◎大島を大別する奄美大島産と鹿児島市産
 大島は奄美大島で生まれ育ったものですが、その発展の歴史の中で明治7年には鹿児島本土に技術が伝えられたそうで、鹿児島市産のものもあります。私は今大島を4着持っていますがリサイクルの大島・100亀甲と夏大島はリサイクル故に産地が分かりませんが、夏大島は琉球藍による藍染めや「もじり織り」(縦糸をよじることですかしを作る織り方)による手織りのもので、奄美産かなと思っています。100亀甲の方はよく分かりませんが泥染は奄美大島でないと出来ません。

〈琉球藍のもじり織りによる夏大島〉
  柄のように見えますが、織り方によって透かしが出来ている涼やかな着物です。
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◎鹿児島本土産の大島
 残り2着は反物を買って誂えたものなので手元に証紙があり、両方とも鹿児島市産です。

〈最初の大島〉
 横糸にだけ絣糸を使い、合理化することでコストを下げたものです。
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そんな機械織り大島については、今日は時間切れなので次回に。

by bjiman | 2015-12-03 02:43 | 和装・着物生活・伝統的工芸品 | Comments(2)