瀬川冬樹氏を愛読していた時代~私のオーディオ史~

オーディオの本を読み始めたのは中学生の頃でしたが、当時、オーディオは全盛期。オーディオ評論家と言われる方にも大家の方がたくさんいらして、それぞれ「俺は菅野沖彦派」とか「やっぱり庶民的な長岡鉄男」だとかあったと思います。
印象的なのは、今考えても皆さんとても文章力があると思う点で、それぞれの語り口で、オーディオを、音楽を、メーカー論を、熱く語っていましたし、著作も多くに及んでいると思います。私は、瀬川冬樹さんが大好きでした。中学生時代、まだ子供でしたが、氏のとても独特の語り口、、、特に「ひどく」という言葉を独特に使われるのが印象的で、「ひどく美しい、、、」といったような、文体を眺めながらどんどん氏の文章に惹きつけられていったものです。
そんな氏の著作集が出ていると知ったのは2014年の頃。その著作集「良い音とは 良いスピーカーとは」((株)ステレオサウンド)は、私が気づいた時には2013年5月発行の初版が全て売り切れていて、中古でも探すしかないか、、、と思っていたら2014年9月に増刷版を注文分だけ刷るというような話があったので兎にも角にも注文を入れて入手できたときはとても嬉しかったです。

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中学時代、特に忘れられない氏の文章は、下の中学時代に撮った写真の中にある、確かSoundMATEか、playtapeのどちらかの巻末に載ったショートエッセイで、ウィーンフィルの会場(?)のセンターマイクに軍事機密の技術を使って無線機を付け、それを自宅の2Tr38cmでゆっくりと楽しみながら録る、、、でも軍事機密を違法に転用している怖さでドキドキし、結局、バレる、という所で目が覚める(夢だった、、、)というような、落語の「夢オチ」のような展開ですが、テープの本だったのでそんな話にしたんだと思います。こんな、ちょっとしたショートショートみたいで、逆に言えば通り一遍のオーディオ評論家ではない文学的な要素が魅力の氏らしい文章だったと今でも印象に残っています。でも今ではこんな違法な事を夢想しなくてもウィーンフィルのニューイヤーは非常に高音質で中継を聴いて自宅のオーディオで楽しめる時代になったのだから隔世の感があります。
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氏は昭和56年(1981年)に46歳という若さで亡くなられ、当時高校生だった私には衝撃的でした。特に読んでいるだけで辛さが伝わってくるような友人の菅野沖彦氏の追悼文が忘れられません。
自動車評論家もそうですが、果たして没後30年も経ってもなお著作集が増刷され、愛読されるというような時の重みに耐える文章を残すことができる方が今どれだけいらっしゃるかと思います。氏の著作集から読み取れることは、やっぱり真剣に書くということだな、と改めて思わされます。それと、やはり読書量なんでしょうね。話題が豊富です。この時代の方ですからとても珍しいという訳ではありませんが、アンプの自作も出来た方ですし、工業デザインもされていました。中でも外国のメーカーのエンジニアとの対話など今読んでも非常に今日的な議題として読むことができました。いい文章は古くならないし、今でも示唆に富んでいました。
また、氏と言えばJBLというくらいJBLを愛されましたが、かといって、今改めて読み返してみても国産メーカーの論評も丁寧にされていて印象的です。
これからの時代を生きていくために、自分も勉強しなければ、そして、たまさか読んでいただくかもしれない文章を書くときは、一生懸命書こうと思うのです。

(長岡鉄男氏の本もずいぶん愛読したものです。)
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2017.6.27 bjiman

ネットを見たら氏の著作集はまだ新品が売られていますから、さらに増刷されたのかもしれません。氏のファンの多さにナルほどとうれしく思います

by bjiman | 2017-06-28 01:47 | PCオーディオへの道
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