日本人論?

NHKが司馬遼太郎さんを取り上げた特集番組をするという新聞記事を見ました。その中で番組のプロデューサー氏がコメントしていた内容に疑問がありました。

〈旧学習院初等科正堂(重要文化財)明治32年築〉SIGMA DP1 Merrill
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そのプロデューサー氏は、視点の中で、この数年、外国人から見た日本や日本再発見がテーマの番組が増えているとし、その要因として、「それだけ今の日本が国際的、経済的に自信を失っているのだと思う」としていました。
私は、これは全然違うと思います。
男着物の揃え方の記事でも書きましたが、若い女性の間で、着物復活の動きが見られます。
経済産業省の調査によれば、20代女性が年間に着物を複数回着るとした回答の割合は50代女性を上回ったそうです。着付け教室も人気があるそうです。なぜか?50代男の私が考えたって分かるわけがありませんが、実際、着物は美しいんです。これは間違いのないところです。

〈新潟県小千谷市の小千谷縮〉
 小千谷縮は、国の重要無形文化財、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
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明治維新や戦後の時代を通じて西洋文化を取り入れ、ある意味では日本の伝統的なスタイルが古いんだと思ってきた時代があったと思います。実際、着物ではなかなか仕事を効率的にするのは難しいかもしれません。でも、着物の美しさが見直されているとも思います。それは日本各地で紡がれてきた歴史を見直すことでもあると思います。
次の帯の写真を見て頂きたいと思います。

〈からむし織の帯〉SIGMA DP1 Merrill
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この帯は、からむしといって福島県昭和村で織られている苧麻(ちょま)という多年草を原料にその繊維から紡ぎ出される糸を使って織られたものです。草木から繊維を取り出して一本一本の糸に紡いでいく工程はとても手間がかかり、織り手の方も高齢化していましたが、最近は村の振興策もあって、県外の若い女性が弟子入りするようになってきたそうです。もちろんビジネスとしての現状は厳しくても、こうした伝統芸能を若い方が継承していこうとしている動きは、決して今の私たち日本の若い人たちが日本の伝統に自信を失っているからではないと思います。
下にあるのは、越後上布という新潟の麻の伝統工芸品の織物です。これも美しく上品です。。

〔クールジャパンの美〕 SIGMA DP1 Merrill
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 近年、クールジャパンといって、日本の伝統文化やアニメ、ファッションなどが積極的にクールだと言われる機会も増えました。私たちは、戦後、西洋文化のいいところもたくさん知りましたが、同時に、日本のいいところも評価し直そう、そんな動きが出てきたのではないかと思います。それは自信のなさではないと私は思っています。むしろ逆でしょう。
 メルセデスのCLAやCLSのような4ドアクーペを見てください。ファミリーユースが考えられる4ドアセダンでありながら思い切り背が低いクーペのようなスタイリングは、居住性を犠牲にしてもスタイリッシュさを優先しているのです。こういうクルマ、私たちのクルマ好き世代では誰でも知っている「カリーナED」の手法です。カリーナEDが大ヒットしたとき、自動車メディアの評価には、居住性を犠牲にした手法に批判もあったと思います。まして骨太だと思っていたメルセデスがこういった手法を取るなんて。私がクルマにこり始めた1980年代、国産セダンとメルセデスに代表されるヨーロッパセダンの設計手法の違いのひとつが、全高の取り方でした。背丈の違いもあったでしょうけれど、当時の国産車セダンは全高が1300mm台のものが多く、評論家の方は、これであと50mm高ければ居住性も改善されるのに、、、とよく指摘されていました。今や私のレクサスHSは、全高を1,495mmも取っていて、乗降性がとっても改善されています。

〔私のレクサスHS。全高が高く取られていて、乗降性が向上しています〕
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山賊ダイアリーという漫画をご存じでしょうか。
岡本健太郎という青年が都市でのサラリーマン生活を経て、子供の頃から育った山村に猟師として帰郷して暮らす作者自身の実話を描いたものです。
私はこの漫画を読んで、淡々と自分の生きたいように生きる現代の青年のしなやかさを感じました。彼は(猟をするので当たり前ですが)きちんと猟友会に入り、必要があれば駆除の手伝いもします。そして、猟友会の中で、もう彼から見たら祖父のような年齢の先輩猟師さんとともに猟に出かけ、指導を受けながら成長していきます。時に愛情溢れる叱責も受けますが、ある時は楽しくともに遊ぶのです。同年代の友人猟師たちもいて、同じようにしています。真ん中の年齢層がすっかり抜けているように感じるのも、今ここで書いてきたこと(50代の女性よりも20代の女性の方が着物を着る回数が増えていること、からむし織の職人が高齢化している中で若い女性たちがこれを学ぼうとしていること)と同じ動きのように思います。
若い方がしなやかに、かつてあった日本の伝統を引き継ぎ、生き生きと生活している様を拝見するのはとても楽しいことです。
この漫画は、リンクにあるように日本財団の選定する「学習マンガ100選」に選定されています。
青年が、社会が、日本を見直そうとしている、それは決して自信のなさの裏返しではないと私は確信しています。

私たちの頃は盲目的に欧米が正しいと思いこまされてきたところがありました。でも今の若い方は違うのではないでしょうか。そして、かつての欧米を「勉強」した私たちにも、「なんか違うのではないか」という感覚が出てきていると思います。よいところは学び、自分たちの伝統もまた、きちんと評価すればよいのです。
それはとてもいいことではないか、私はそう考えています。

「自信を失っている」 もうそんなことを考えるのはやめましょう。

2016.2.10 bjiman
SIGMA DP1 Merrill

by bjiman | 2016-02-11 01:17 | 和装・着物生活・伝統的工芸品 | Comments(0)
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