男の長襦袢あれこれ~男着物・3年目の着物道楽 その14~

 男着物の中でも「長襦袢」は、それなりに数も必要でありながら、着物の中に着るものなので心理的に費用が掛けにくく、揃える機会を逃しがちなものだと思います。
 そんな長襦袢。私は袷用の正絹が3着、単衣や夏の薄着用の2着の5着を揃えています。

(1)オーソドックスな、誂えの正絹長襦袢
   これは100亀甲の大島をリサイクルで購入した時にセットでついていたものです。長襦袢は、それ自体を単独でお仕立てするよりも、着物と一緒にお仕立てして、着物の袖から出ないように、裄(袖までの長さ)が長着よりも少し短くなるようにお誂えするのがよくあることだと思います。この長襦袢は着物とセットで購入したものなので、もちろんそのように仕立てられています。

〈正絹・誂えの長襦袢〉 SIGMA DP2 Merrill
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「龍虎相搏つ(りゅうこあいうつ)」は、龍も虎も強い動物の双璧なので、優れた実力者同士が争うことの例えとする故事のひとつのようですが、この長襦袢の絵柄は、まさにそんな龍虎図の屏風のような絵です。男の着物は、外から見える長着(着物)には無地や無地に見える縞や杢、亀甲柄のようなものを用いるので女性の染め物のような絵柄は入れません。代わりに外からは見えない長襦袢は派手に、という事でもないのでしょうが、長襦袢は龍虎や富士山などの縁起物の絵柄があるものが一般的だと思います。
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「祖仙」の号が入っているので、江戸時代中期に活躍した森祖仙さんの絵かなと思って検索してみましたがそれらしいものは見つけられませんでした。
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〈私が誂えた正絹の長襦袢〉
 これは以前もご紹介したもので、はじめて緯総絣の大島紬を仕立てた時に一緒に誂えてもらったものです。
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〈鳥獣戯画〉
 鳥獣戯画は、動物などを擬人化して描いた日本最古の漫画と言われるもので、平安時代末期から鎌倉時代にかけて僧侶などによって描かれてきたと考えられているもの。本物は京都・高山寺に現存しているそうです。この長襦袢は反物から選んでお仕立てしたものなのでそれなりに値の張るゼイタクなものになってしまいました。
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〈既製・正絹の長襦袢〉
 長襦袢は数もいるものですが、そうそう毎回反物から高価な正絹の長襦袢を仕立てるわけにもいかないなぁと思っていたころ、デパートのリサイクル着物市に出掛けた際に男着物コーナーにあったのがこの既製の長襦袢。新品で、サイズが2種類選べて着てみたらちょうど良いのが合ったので買ってきたものです。
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 芥子色のもので、半襟も同色のものがちゃんと縫い付けてあってこのまま着られるのが良かったです。
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〈夏用・絽織りの長襦袢〉
 素肌ないし肌襦袢の上に着る浴衣と違って、着物は夏でも着物の下に長襦袢を着る決まりです。といっても夏ですから暑いので、夏の着物用には絽(ろ)や紗(しゃ)織りの長襦袢を誂えるのが一般的です。
 私の夏用長襦袢は絽織りの化繊素材のものです。呉服店の店員さんから、正絹の着物の下に化繊は相性が良くなく、化繊は人工的なものだから生地が強いために上の正絹を痛めてしまうので注意して下さいと教えて頂きました。私は夏用の薄物のラインナップは、正絹の夏大島のほかは、越後上布、小千谷縮といった麻の2着と、サマーウールの1着なので、頻度からいって化繊で十分ということもあり、化繊で誂えました。夏の長襦袢はどうしたって汗とのおつき合いがあり、家庭の洗濯機で洗える化繊の長襦袢は持っておいた方がいいと思います。
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 半襟には私の好みで江戸小紋の青海波をチョイスしました。
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薄物の織り方は捩り(もじり)織りといって、経糸と緯糸を絡ませて織るようになっています。
その織り方の種類によって、羅(ら)織り、紗(しゃ)織り、絽(ろ)織りなどがありますが、絽織りは一定間隔毎に平織りと透ける面が連続する絽目(ろめ)があることで分かります。紗が全面に透け感があるのに対し、絽は透けない面もあるので着やすいということもあります。
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 参考までに、私の紗織りの帯です。 DP1 Merrill
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紗の織り方の婆は、このように全面に透けるという感じです。羅織りのようでもあります。
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〈単衣の時期用、着物生地で誂えた絽織りの長襦袢〉
 さて、袷の時期や盛夏の時期はどの長襦袢にしようかなと迷わないのですが、単衣の時期は困ります。
 単衣用の長襦袢というのはありませんから、袷用の普通の長襦袢が基本とはいうものの、昨今単衣の時期である5月や6月、特に6月には盛夏のような暑い日もあります。といっても盛夏用の薄物の長襦袢はやっぱりルール違反という気がして着られない。そんな風に悩んでいたとき、呉服店の店員さんが、女性用の絽の着物の生地で長襦袢を仕立てることを提案してくれました。絽なので透け感が目立ちにくく、色も着物の生地の中から濃いめのダークなものにしたので透け感が目立ちません。
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遠目には絽目が目立ちにくいのですが、、、
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こうやって見るとハッキリ分かります。
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〈お気軽な二部式だっていいんです。モスリンの半襦袢〉
 半襦袢というのは長襦袢の下に着る肌襦袢と長襦袢の間のような存在。下にはステテコを履くので二部式といったりします。しっかり長襦袢を着るのと違って半襦袢は気軽なのが持ち味。私はだいたい家で寛ぐときは半襦袢を着ています。肌襦袢は着ないですね。もうTシャツのままです。でもそんな風なのが戦後の「昭和のお父さん」的なスタイルだと思っています。
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 「あなた、長襦袢をいつも着るから偉いわよね」なんて言って頂いたこともあるのですが、実は半襦袢もよく着るんですとはなかなか言えません。呉服業界って何だかいつも厳しいのですが、もっとカジュアルも大事にしないと着物の普及がおぼつかないと思ったりするんです。この半襦袢の生地は、昔は長襦袢生地といえばこれ、というモスリンです。モスリンは綿や羊毛を平織りにしたものだそうで、腰紐などにも用いられます。正絹と合わせても着物を傷めないそうです。私のこれも、表面が毛布みたいに起毛されていて優しい手触りなんですよ。
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長襦袢といっても実に色々な種類があり、奥が深いのが着物世界の楽しみです。長襦袢は、着物の下に隠れているので手を抜こうと思えば抜けますが、でも、長襦袢のサイズが合っていないと着物が上手く身体に沿わないとか、やっぱり見えないところにこそ、手を抜いてはいけないといった色んな意味で楽しみがいのあるものです。
いろんな長襦袢、楽しんで頂けましたでしょうか。

2016.1.23 bjiman

by bjiman | 2016-01-23 18:58 | 和装・着物生活・伝統的工芸品 | Comments(0)
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