私の好きな結城紬① ~男着物・3年目の着物道楽 その2~

◎男着物の揃え方のオススメ(一例)
 和装には季節のルールがあって、10月から4月までが裏地のある「袷(あわせ)」という着物。これが基本です。5月~6月と9月は裏地のない「単衣(ひとえ)」に、7月と8月は、絽(ろ)や紗(しゃ)など涼やかな織り方になる「薄物(うすもの)」になります。なので、もし年間を通じて着物が着たいということになれば、最低3種類の着物を揃える必要がある訳です。
 もし私がどなたかから、どういう順番で揃えたら良いのかと聞かれたら(聞かれませんけど(笑))、まず最初に袷で、結城紬のアンサンブル(着物と羽織を同じ生地で揃えるもの=お対(つい))で、色は濃いグレー系。柄は複数の色違いの糸を織り込んで柄を作る杢(もく)を揃えることをオススメするでしょう。次も袷で大島紬。柄は亀甲(きっこう)。色は藍色。袷を最初に2つ揃えるのは、やっぱり着物としては袷が基本形だからです。次に単衣。これは手頃な紬でいいと思います。夏の薄物は小千谷縮などの麻。お茶をするのであればどこかでお召(めし)と袴を揃える必要がありますが、ここまでくれば自分の考えで選べるはずです。オプションとしては、木綿やウールの日常着を揃える機会があればより着物の世界を楽しめるかと思います。順番は違いますが、これは私の体験談でもあります。

◎結城紬が好きなワケ
 結城紬は茨城県結城市を中心に織られている紬で、紬の代表格。最初の着物としては鹿児島県奄美大島の大島紬も有名ですが、私は自分が在住する千葉県東葛地域が結城のすぐ近くというご縁もありますし、結城紬をオススメします。何と言ってもこちらは紬の中の紬といってもいい自他共に認める伝統品ですし、その特徴は、真綿から紡いだ紬糸の持ち味そのままに、柔らかで暖かい着心地であるのに対し、大島はその発展の中で紬糸を使わなくなり、その持ち味は、結城とは対極にある薄くしなやかなシャリ感にあるからです。どちらにも魅力がありますが、まずは本物の紬を味わって欲しい。それが私が最初の、そしてベストの着物に結城紬を押す理由です。

〈緑と黒の杢柄の結城紬アンサンブル〉 (茨城県結城市 結城紬の産地問屋「奥順」さんにて) SONY CyberShot RX100
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◎最初の結城紬は、リサイクル。
 私が最初に入手した結城紬は、ネットのリサイクルショップで購入したものです。
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絣糸による柄で、色は濃い藍色と薄い藍色のコントラスト。非常にオーソドックスで、着ていく場所を選びません。
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絣糸ってどういうものかというと、上の着物の場合、こういう風になっています。
まず、最初に濃い藍色で糸全体を染めて、その後、今度は木綿糸を縛って、縛った部分は色が染まらないようにして薄い方の藍色を染める、という方法をとっていると思います。糸を見るとこんな感じです。
この糸を織り合わせて柄を作るんです。着物の反物が、なぜ高価になるのか分かると思います。本当に細かい作業です。
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羽織の裏に張る羽裏は、瓢箪とダルマでした。瓢箪は末広がりになるということから縁起の良いものなので何だか着ていて嬉しい気持ちがします。
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この着物、私がネットショップで買った初めてのリサイクル着物でした。
それまで何度も呉服屋さんで採寸をしてもらいながら着物を誂えていたので自分のサイズがどのくらいかは分かっていたつもりでしたが、改めてネット画面と採寸された情報だけで選ぶというのはちょっと慣れが必要な分野です。不安な部分もありますが、リサイクル品で採寸が自分と完全に合っているということを望むのは高望みというものです。多少は何かが出てくるもの。この着物の場合は、裄(ゆき:背中心から袖まで)の長さがちょっと足らない、それもほんの2cmというところなのですが、まずは購入して結城紬を着てみたいということで買ったものです。届いた着物を広げてみると、何だかカタチがいびつでどこか歪んでいるような気がしました。(届いた時は仕付け糸が付いていましたから、前のユーザーが着ていたようにはちょっと見えないという感じではあります。)

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ところが、試着してずっと過ごしているうちにみるみるシワが伸びていき、最初に感じたゴワゴワ感がなくなっていくのが分かりました。それでちょっと和装ハンガーに掛けておいたら相当シワがのびてすっきりした感じになりました。(夜でピントがぼけてます)
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単に折りジワが伸びただけということかもしれませんが、着ているウチに柔らかくなっていくのが実感でき、また、以後は着る度に着心地が良くなっていったことも確かで、うーん、これが結城か、これが真綿の紬か、と実感できた着物。結城紬は、製造段階で使う糊に小麦粉を使い、かなり固い感じになるので、仕立ての時の湯通し(糊を取る作業)が甘いとゴワゴワしてしまうのだそうです。また、ちゃんと仕立ててあったとしても、着ているウチに、また、洗い張り(着物をいちど縫い合わせを全部取ってから洗う工程。)をする毎に柔らかさを増していくというのが結城です。そんな結城紬の柔らかな風合いがとても好き。私の今の一番のお気に入りと言えます。
ただ、この結城は商標もなく、本真綿の結城であるという以外、どこで織られたものなのかが分からないものでした。その分、お値段もお買い得でしたが。。。
「次は出所の分かる結城紬を買おう」そう決心したきっかけにもなりました。ただ、そうだからといってこの着物が気に入っているということは変わりません。
では結城紬の商標とはどういうものか。次回に続きます。

by bjiman | 2015-11-24 05:00 | 和装・着物生活・伝統的工芸品
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