トヨタ・クラウン60周年記念展に思う~クルマの自虐史観から抜け出せ~さらばクルマジャーナリズム③

クラウンの60周年に際して改めて私が思うことは、この日本で伝統を紡いでいくことの難しさと、それをきちんと評価できないメディアの質の低さです。
私はこの数年間の中でギリシア神話に出会ったことと、白洲次郎氏に惹かれたことで人生観に大きな影響がありました。学生時代からもっと熱心に勉強していればもう少し早く気づいていたのだと思いますが、、、
このような前提で、クラウンの伝統と、その周辺にあるメディアの問題点について考えてみたいと思います。これが、私の「さらば、クルマジャーナリズム」のまとめになると思います。
クラウンは、60年の歴史を刻んできました。そしてそれは、日本の戦後社会の発展とともにあったのだと思います。
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初代クラウンの登場は昭和30年。戦後、少しずつトラックの生産から再開し始めた戦後のモータリゼーションの揺籃期に登場したそれは、クルマを所有するなんて想像もできなかった時代、日銀の総裁が日本でクルマ産業を育てようなんて無駄だ、アメリカから輸入すればいいんだという、今日から見ればおよそ想像もつかない意見が経済人としては常識的だった状況の中で生まれたのです。そんなクラウンの誕生までの開発者達のモチベーションを支えたのは、創業者から伝わる「日本人の手で、クルマを作り上げるんだ」という強い信念だったのではないかと思います。
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クラウンは、現行型のGSR210系に至るまで、14代のモデルを重ねてきました。これは国産乗用車最長であり、そのモデルチェンジの歴史は、日本の戦後史における、自動車の発展の歴史そのものであるように思います。
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今回、改めてクラウンの14代を俯瞰して眺めてみて、色々な試行錯誤があっただろうクラウンの歴史は、まさしく先人の成し遂げてきた技術、誇りの結晶であるように思いました。
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そしてその歴史は、クルマの開発者、メーカーだけではなく、そのクルマを買い支え続けてきたユーザーや、そのクルマの歴史を支えてきた戦後日本の社会が成し遂げてきた足跡でもあるのだと思います。
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私を育ててくれた母校は創立100周年を超えましたが、現役の頃、お世話になった恩師に文化祭や体育祭の運営が成功した時などにいつも言われていたことは、「上手くいったと思うなら、それはお前達の成功ではない。後輩にバトンを渡した先輩達が頑張ったということだ。」ということでした。伝統を形作ってくれた、そしてそれを間違いなく伝えてくれたという先人に感謝し、そして卒業する前にきちんと後輩に伝えていくんだぞという教えであったという風に今では解釈していますが、私は今でも恩師のそんな教えを十分には実践できなかったなという反省とともに人生の糧にしています。最近トヨタは、クルマジャーナリズムが十分には伝えてくれないであろう開発の歴史や、開発者の意図を自分たちの言葉で発信しようと努めているように思いますが、トヨタが運営するGAZOOの開発者インタビューの中で、現行型クラウンの開発チーフエンジニアの山本卓CEのインタビューを読んでいたとき、山本卓CEが、クラウンの開発は、レクサスLSを開発していた時よりも楽しめた、なぜならクラウンには50年以上の歴史、伝統があり、過去の苦労は歴史を紐解けば分かる。長年使い続けてきたユーザーやそんなユーザーを知る販売店がある。それが開発のアドバイザーとなるからです。」と仰っていたのが印象に残りました。また、雑誌のインタビューでも、「(クラウンのCEは)大変だろう、重いだろうと言われるけれども、歴代の仕事を踏まえつつ、全く新しく作るんだという気持ちで向かい合わないと作れない、だからこそ楽しかったのだ」と仰っていたのも印象的でした。
(第14代 ’YAMAMOTO’クラウン)(MC前)
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ここ数年で書き手が変わった毎年出る車評本のクラウンの評価では、そんな開発の歴史に過去からの制約が厳しいとか、過去のしがらみで買い支えられている、、、というような揶揄が書いてありましたが、私は(レベルは相当違うものの)50代の組織人としては、もし自分が担当したら、、、という目線で見てしまいます。そんな時、過去の制約がどうのとか、過去のしがらみがどうのとか、そのような些末なマイナス思考は全く無駄であり、クラウンのような伝統があって、その過去の伝統を踏まえる必要があるということは、却ってラクだ、むしろ型がある分、好都合だという風に思うようにするでしょうし、リーダーとしてはそう思うべきだとも思います。しかもクラウンの伝統は、常に新技術への挑戦という革新を伴った歴史です。守るだけではなく、挑戦してやろうという風に自分をポジティブシンキングに持って行けることは、とても素晴らしいと思います。もちろん難しいでしょうけれど、始めからラクな仕事なんてもともとありません。そんな幸福な歴史を持つクラウンが、現在国内自動車販売ランキングのベスト30の中で唯一、セダン専用車としてランクインしている。ただランクインしているだけではなく、MC直前の4~9月期においても22位という好成績を出していることは、実に喜ばしいことだと思います。山本CEの仕事の見事さだけではなく、それを理解し、「よし買おうじゃないか」というユーザーがいることも幸せなことです。
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クラウンが幸福な、神に祝福されたクルマだと思う事は、クラウンを熱烈に支持するユーザーがいることです。私の父の知人にも熱烈なクラウンユーザーがいます。その方に、レクサスのHSにするかクラウンにするか迷っていた時、自分はまだ40代だったので身分違いなのではないかと相談したのですが、返ってきた答えは、「今はそんな年齢の挌なんて気にしなくていいんだ。クラウンにしなさい」というものでした。(結局私はHSにしてしまったのですが、納車後、知人に見て頂いたとき、「レクサスは別だ。これならいい。」と言って下さいました。でも、「オレのクラウンの方がトランクが広いぞ」とも自慢されましたが(笑)。)クルマは、ジャーナリストの批判のためのものではなく、ユーザーのものなのです。そして、熱烈なユーザーに支えられたクラウンを理解できないというジャーナリズムは、ユーザーを見ていない、ユーザー不在の議論をしているということです。私はそのことが、いちばん問題だと思っています。
(歴代クラウンのリアトランクは、ゴルフバックを4セット積みやすいことが大事な要素でした。)
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次回は、私が特に問題だと考えているジャーナリズムの記述振りについて、事例を挙げながら考えてみたいと思います。

2015.9.20 トヨタMEGAWEBにて

by bjiman | 2015-10-29 02:04 | CAR | Comments(2)
Commented by tamsanpe at 2015-10-29 13:35
こんにちは。
僕の場合、クラウンやレクサスは年に数回、車で行く出張の時に運転していく程度。
もちろん所有してないので全く詳しくなかったのですが・・・・
このブログで歴史など色々と少しだけ詳しくなったような気がします^^
Commented by bjiman at 2015-10-30 00:17
tamsanpeさんこんばんは。コメントありがとうございます。
クラウンやレクサスでご出張に行かれたりするんですか。それは貴重な機会ですね。やっぱり乗っていないと分からないから。。。
私は、学生時代、仲の良かった友人が自営業者の息子だった関係で仕事に使うメルセデスの助手席に何度も乗せてもらったことが自分の感性の訓練になったと思っています。
歴史など読んで頂けてとても嬉しく思います。
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