私の「いつかはクラウン」⑤ ~CROWN MAJESTA~

私は、現在のCROWNシリーズのうち、特にこのMAJESTAが好きです。

〈CROWN MAJESTA〉TOYOTA MEGA WAVE@お台場 (SIGMA DP1 Merrill)
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現行型クラウンを購入対象に考えていたごく初期の頃、当時、まだ池袋にあったトヨタのショールーム(アムラックス)にクラウンを見に行った際、クラウンがとても気に入ったものの、贅沢を言えば、後部座席の足元が気持ち、もう少し広いといいなと思っていました。現行型マジェスタが登場後、改めてアムラックスで登場成ったばかりのマジェスタを見た時、十分広い足元とともに、あぁこれはクラウンらしいなぁと思いました。贅沢だけれども、トヨタの最高級車というのであればこのような感じだなと。
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スタイルも伸びやかで、凝縮感のある標準のクラウンよりも高級車らしいと感じました。
フロントグリルも落ち着いた中にも品がある感じです。
4,970mm×1,800mmという全長・全幅も、日本国内専用の高級車としてはちょうど良いところではないでしょうか。全長が5m以内に納められている点に配慮を感じます。5mを超えると、駐められる駐車場が限られてきますし。
予算的にも車挌的にも自分が買うという対象ではありませんが、私が初めて「欲しいな」と思ったマジェスタでした。
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さて、マジェスタといえば、旧型まではV8エンジンであったのに、現行型はV6ハイブリッドになったことで、自動車専門誌やジャーナリストからは、「なぜV8じゃないのか」という識見の感じられない指摘が数多く書かれていました。彼らからみれば、612万円~792万円と高額で、4.3ℓと4.6ℓの2種類のV8エンジンを持っていた旧型マジェスタと比べると、3.5ℓV6ハイブリッドの現行型マジェスタは格落ちという印象を抱いたようです。「V8の静かさがない」、「レクサスと比べて高級車はいらないということか」「V8も残した方が良かったのではないか」といった非常に的外れ(に感じる)指摘を多く見ましたた。これは私が現行型を見たときと全く違う印象でした。
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私はこの一連の件で、自動車ジャーナリストという方々は、クルマを評価する際に、クルマの性格や背景、セールスなどの条件を除外して、「目の前にある一台のクルマ」としかクルマを見ていないという風に思うようになりました。これは一見正しいようですが、はっきり間違っているという風に私は思います。いつも比較の対象が前のモデルだったり外国車だったりと、視線が常に「過去と現在」にあり、「未来」にありません。でもクルマは何年も前から未来を見据えて計画され、発売後、何年も先まで売られるのです。クルマも相手のある商品です。「今まではこうだったのに」という視点を捨て、「これからはこうだよね」という考えが必要だと思います。
例えば、旧型マジェスタの販売台数の推移を見て下さい。
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発売4ヶ月には、販売台数が170台/月に落ち、以後、ほとんど回復していません。最後の半年は、70、40,40,40,30,10台という悲惨さです。
私もアラフィフなので、この頃はこういうものを見ると、(そんなことは絶対ないのですが)「もし自分が担当するのだったら」という視線で見てしまいます。これでは次の開発許可を取るのも難しいでしょう。クルマは何年も前から、何年も後の生活・社会を見通して開発しなければなりません。1年持たずに販売台数が100台の単位に落ちているのです。開き直るしかないのでしょうが、理解や協力を得るのは大変でしょう。クルマを売ることがボランティアじゃないんですから。
実際、現行型マジェスタの開発責任者がトヨタのサイト、「GAZOO」での開発者インタビューで答えていますが、マジェスタは社内では「もういらないのではないか」と言われ、開発の承認を得るのに、約半年役員を説得したといいます。マジェスタは、最初から「変わらなければならない」という前提があると思うのが普通でしょう。
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マジェスタのような高額車に乗る方は、大凡において社会的地位の高い方でしょう。そういう方には、本人の嗜好とは別に社会的な責任が求められます。エコな時代ですから、いつまでもV8、4,000ccなんていうクルマに乗っている訳にもいかないでしょう。旧型マジェスタには、ハイブリッドがありませんでした。日本のジャーナリストは、欧州車がダウンサイズすると、すぐに「日本は遅れている」と書きますが、いざクラウンがダウンサイズすると、V6じゃないクラウンなんてあるのか、V8じゃないマジェスタなんて、、、と書きますが、今のVWパサートなんて1.4ℓで何か批判するのでしょうか。むしろ燃費の良さを褒めるのでしょう。おかしなものです。ましてや旧型マジェスタの販売台数を見れば、ニューモデルが出ること自体が大変だったろうなと思わないのかなと不思議な感じがします。私から見ると自動車専門誌の議論はないものねだりの、しかもピントが外れた議論にしか見えないのです。それはきっと、自分では買わないからです。
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新型マジェスタは、グレードを2種類(標準仕様と、オプションの充実した仕様)、価格はどちらも600万円台に抑えられています。マジェスタはもともと6割が法人需要というクルマです。
個人の嗜好性よりも、社会的な立場のある方に対する視線や、コスト管理という目線が必要なのでしょう。そういう意味で、開発する立場から見れば冷静な市場判断が求められるような気がします。
使い古された表現ですが、マーケティング用語で、「プロダクトアウト」、「マーケットイン」というものがありました。どちらかといえば近年は、前車を「作りたいモノを作る」「良いモノを作れば売れる」というふうに、後者は「マーケットの望むものを作る」「消費者指向のモノを作る」という風に解釈され、プロダクトアウトからマーケットインの思想へ、という風に使われてきましたが、私はどちらも大事なことだと思っています。
プロダクトアウトはコア技術を使った独自性を問われます。素人の浅学非才で恥ずかしいのですが、それを棚に上げて書けば、マーケットインに偏りすぎれば安きに流れ、どこのを買っても同じでしょうという世界に巻き込まれることも覚悟しなければなりません。むしろ価格が高くても、〇〇のコレが欲しいというような世界を作っていくことも必要でしょう。それがブランド価値という付加価値でもあり、また、トヨタでいえばハイブリッド技術こそ、自分で作り上げてきた付加価値であり、コア技術でしょう。また、エコ技術はマーケットインに基づくものでもあります。同じエコを目指すのでも欧米の左右を見れば良いというのではありません。メディアからみれば「またか」と思うようなものでも繰り返していかなければ認知度も上がらず、付加価値なんて作られません。
私は、マジェスタの3.5ℓV6ハイブリッドは、プロダクトアウトにも、マーケットインにも配慮された合理的な選択に思います。過去のセールス結果にも触れず、V8は?高級感は?と指摘するジャーナリズムには、プロダクトアウトの思想も、マーケットインの思想も感じられません。そこにあるのはクルママニアとしての要望という発想なのでしょう。言っていることが分からないというのではありません。

新型が出てから21ヶ月。旧型と比べると、販売台数に大きな差が出ています。
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今のマジェスタは、一応、月間販売台数の目標は500台/月となっているので、これでも下回っているのでしょうが、旧型マジェスタが発売21ヶ月で早くも111台しか売れていない状況であったのに、現行型は310台/月と3倍になっています。もちろん高額車ですから景気動向に左右されている面も当然にあるでしょうけれど、法人需要が多いクルマなので発売して数ヶ月の買い替え需要が収まると落ち込むという方向性は同じでも、これだけ販売台数に差が出るということが、より市場の求めるものの判断に誤りがないことの証であるように思えます。自動車ジャーナリズムは、自分たちの周囲の意見ばかり見ていないで、クルマなのですから、現実にそのクルマを買う「クルマのユーザー(が求めるもの)」を見るべきではないかと考えます。
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「レクサスがあるから、トヨタに高級車はいらないのか」という意見を見ると、まったくレクサスとトヨタの性格の違いがピンと来ていないなと思うのです。これは善し悪しではありません。
例えば、レクサスの内装パネルの一つに、縞杢という凝った木材シートを用いたものがありますが、これは家具好きなら知らない人はいないというほどの有名な「天童木工」という家具メーカーに発注されているものです。
レクサスの縞杢
天童木工といえばニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションになっている柳宗理氏デザインのバタフライスツールが有名です。海外に打って出るレクサスは、西洋の文化である自動車に、和の文化の先端を感じさせるモードを織り込む必要があるのでしょう。天童木工のような、海外で高く評価されている日本デザインの中でもとりわけモダンな、ある意味では尖ったデザインをするパートナーを見つけて、ともにチャレンジしていくような挑戦者の姿勢がなによりも大切でしょう。そのためには多少高くっても、むしろ積極的なくらいにコストを掛けてでも、他に替えのきかないモノを作り上げていく必要があるのでしょう。前にも書きましたが、ウオールナットなどの高級木材パネルは、所詮、イギリス人などの西洋人の考え出したものでどんなに上手に作ってもロールス・ロイスが本物です。そんなことを追求する意味がありません。欧米人と同じ土俵で勝負できて、欧米にはないものを。レクサスは高いと言われますが、そうなる理由も、そうなる必要性もあると思います。
〈レクサス・LSの縞杢パネル〉
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しかし、普通の生活の中で、尖ったデザイン、モダンなデザインのものは好みが分かれます。
落ち着いた、ごく自然なものを好む人もいるでしょう。
トヨタブランドのクラウンは、レクサスのような冒険は必要ないし、世界に日本のモダンデザインを問うことも必要ありません。実用的に十分美しければ、合理的にコストを管理することも求められます。クラウンは、私たちの日常生活に普通に取り入れられている、西洋を取り込んだ現代の和なのです。LSのV8ハイブリッドは1,000万円以上もしますが、横を見て外国のライバルと見比べれば決しておかしなことではありません。さらにトヨタブランドには、V12・5,000ccと別格のセンチュリーが1,253.8万円であります。でもマジェスタは600万円台、700万円台弱ですが十分に高級です。それともジャーナリストの皆さんは、私たちに600万も700万もするものが、高額ではないとでも仰るのでしょうか。

〈マジェスタの木目調、欅・玉杢パネル〉
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私は、お会いしたことは残念ならがありませんが、今回のクラウン特集に込めたように、現行型クラウンの開発責任者の方に敬意を感じています。大変バランスのいい判断という風に思える開発をリードし、完成させ、販売成績も出すという結果も伴って、素晴らしいお仕事だなと敬服します。


by bjiman | 2015-08-01 03:02 | CAR | Comments(2)
Commented by 腹一杯 at 2016-02-07 22:11 x
はじめまして。昨年10月くらいから拝見しております。投稿が遅れて恐縮です。私は主様とは3歳くらいしたかと思います。20歳くらいから自動車雑誌ばかり見ておりました。長年しっくりこない漢字が何か分かりませんでした。しかしながら、主様の卓見を拝見してわが意を得たりの気持ちです。心の底から同意いたします。自動車雑誌の方々は現在より過去しか見ていないと思います。乱文失礼いたしましたこれからも陰ながら応援しております
Commented by bjiman at 2016-02-09 01:32
はじめまして。コメントありがとうございます。
私もそうですね。免許を取ってから興味を持って、20歳の頃はクルマ雑誌をよく読んでいましたね。
あの頃は未知との遭遇で、30歳頃は、何か自分も変われるかなという期待もあってどっぷり浸かっていたものです。私が自動車ジャーナリズムに強い疑問を感じ始めたのはここ数年のことだと思います。
腹一杯さんに意見を読んで頂いて、何か感じて頂けたのだとすれば大変嬉しく思います。
腹一杯さんのコメントにもあるように、私も自動車雑誌は、過去ばかり見ていて、今日とこれからの未来を見ていないと思いました。もっといえば、クルマを愛する気持ちはユーザー個々のものなのに、彼らはそのユーザーを見ていないのです。クルマ雑誌を読むことはもうほとんどないと思いますが、レクサスについてはこれからも発信していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。
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