レクサス・HS250h インプレッション⑦ SAIとの違い②

〈焦茶と鮮やかな緑のコントラスト〉 2015.6.28 川崎市立日本民家園にて (SIGMA DP3 Merrill/50mmF2.8)
古民家を見ていていつも美しいなと思うのは、木材の濃い茶色と、その隙間から覗く美しい緑のコントラストです。
光と影が織りなす美を、いつも胸に感じながら写真を撮っています。


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トヨタ・SAIは、昨年のMC後、ちょっと派手なデザインになりましたが、私はMC前の落ち着いた雰囲気の方が好きでした。

SAIはもともと、ミニクラウンのようなFR小型セダンのプログレの後継車として考えられたものだったので、この方が、プログレの落ち着いた雰囲気を継承しているような気がしたので。

〈トヨタ・SAI(MC前)〉 2014.4 東京都葛飾区・水元公園にて (SIGMA SD1 Merrill/SIGMA 10-20mmF4-5.6EXDC/20mm,F11,1/200秒,ISO100,トリミング)

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〈トヨタ・プログレ〉 
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〈トヨタ・SAI(MC後)〉 
2013年8月29日のMCでは、前後のフェイスにだいぶ手が入れられ、派手な感じにリニューアル。翌9月から2014年2月まではコンスタントに2,000台/月以上のセールスとなり、乗用車販売ランキングのベスト30以内にランクインしました。
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実は、私は、レクサス・HSも、実際に自分が乗るようになってからは、2013年1月のMC前の方が落ち着いていて好みです。
〈レクサス・HS250h(MC前)〉 2014.4 福島県会津若松市内にて (SIGMA SD1 Merrill/SIGMA 10-20mmF4-5.6EXDC/20mm,F7.1,1/80秒,ISO100,トリミング)
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〈レクサス・HS250h(MC後)〉
MC後は、現在のレクサスの共通アイコンである「スピンドルグリル」を装備して雰囲気の共通化が図られています。ブランドイメージの戦略上の狙いは十分理解するものの、MC前の落ち着いた雰囲気も捨てがたいです。
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SAIとHSは兄弟車ですが、昨日までに書いてきたように、そのコンセプトやターゲットはかなり違うものになっていると思います。
実際、基本骨格は共用するものの、ボディパネルも専用品になっており、マークⅡ/チェイサーのようなバッジエンジニアリングの兄弟車とは次元の違うものになっていると思うのですが、車評本の評価などを読んでいると、兄弟車のような造りが、レクサスのイメージ戦略にとっては良くないのではないかといった評論を読みました。しかし、私はこの評論の指摘しているところが分からないとは言いませんが、このようには思わないところがあります。それは、HSが好きな故です。

HSを見た時、2種類の革内装素材(廉価版と高級版)、革の色が6色もあること、それもエクリュのようなエレガントなカラーを揃えて、なおかつ、10色のボディカラーと、3種類のオーナメントパネルを自由自在に組み合わせることができる、価格は400~500万円と高額。こんな贅沢なクルマをよくトヨタが出せたなぁと思いました。GSやISのようなFRのスポーツセダンと違って、このようなエレガントでどちらかといえば女性を意識して設定したような構成で多くの販売台数を狙っているとも思えません。
実際HSは、最初から販売目標が月500台の設定です。このような少量生産のクルマを作るには、SAIのような、骨格を共用できるクルマの存在があっても、私はまったくおかしくないと思います。むしろ、HSは、SAIがなければ作れなかったのではないでしょうか。

このような例は、欧州にはいくらでもあります。
例えば、HSがSAIと基本骨格を共有していることがレクサスのイメージ戦略上不利であるというなら、VWのトゥアレグとポルシェ・カイエンはどうでしょうか。この2車は、もともとが共同開発であり、基本骨格を共有しています。カイエンの狭角V6エンジンは、もとを辿ればVWゴルフⅢのVR6がベースです。このような開発となったのも、ポルシェ側に、初めてのこうしたRV車で高額なポルシェでは台数が望めず、開発コストを抑えたいという思いからでしょう。

VWとポルシェ、アウディの同族関係はいうに及びません。
VWの主力車種、パサートは、もともと、VWがビートルの後継車が作れず、当時のVW社長がアウディの社長時代に手がけたAUDI80をベースに、基本的なパネルやエンジンを共用するカタチで作られたものです。ゴルフは、そのパサートのショート版のような構成。デザイナーはすべてジョルジェット・ジウジアーロさんです。アウディ80がなければパサートは出来なかったし、パサートがあったからといって、アウディ80は立派にブランド戦略を確立しました。

VWのPOLOは、今ではメジャーな小型車ですが、開発当初は、このような小型車のマーケットがあるのかVWもつかみかね、ほぼ同じクルマをアウディ50として先行発売し、市場性を確認してからポロの方を後から出すという慎重な方法をとっています。
こうした開発が、アウディ車のボンネットを開けるとVW、といった陰口を生んだ側面はありますが、しかし、アウディ・VWは、こうした開発によりコストを合理的に抑えながらブランドイメージを確立したのではないでしょうか。

私の好きな、ランチア・テーマは、開発費の抑制を目的に、フィアット・クロマやアルファ164、サーブ9000と共同開発されています。
特にテーマとクロマは、パネルがほぼ共通ですが、ランチア・テーマは大ヒットしました。アルファ164もヒットしました。
クロマはフォーマルなセダンのテーマとは逆に、5ドアハッチバックボディにして、フィアットブランドならではの使い勝手に配慮した設計が上手だったと思います。
このような仕様が、ランチアのイメージを落としたでしょうか。

ランチア・ムーサは、フィアット・イデアというスズキのワゴンRのようなクルマの内装を思い切りランチアらしくコーディネートしたもので、私は、イデアには興味がありませんが、ムーサはかなり欲しいクルマでした。CGの故・小林編集長が愛用されたという記事を読んだ時は、私も一ファンとしてとても嬉しい思いがしました。

古来、欧州の高級車とは、通常のクルマをベースに高級な内装を施したものというのは数多くの例があります。
イギリスのバンデン・プラ仕様。もともとはコーチ・ワーカーだったバンデン・プラの名前を冠した高級仕様は、ADO16を始め、多くのクルマに設定されています。フランスなら、ルノー5のバカラ仕様。日本でいえばマーチに該当するようなこの小型車に、とびきり美しい革内装を与えたバカラ仕様は、私の憧れでした。

HSとSAIの関係は、HSのようなフランス的なクルマが登場するには必要なことだっただろうし、欧州のクルマの歴史を踏まえれば、少しもおかしなことではないと、私ならば思います。


by bjiman | 2015-06-30 03:26 | CAR
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