FUJI GA645W 山岳写真ファンに向けたコンパクトな中判カメラ

「眠っている機材」その2は、FUJIFILMの中判カメラ GA645W です。フィルム時代最後の私の主力機でした。この機材も、北海道の知床での夏休み以来、眠ったままになっています。
(※2012年現在、また少しずつですが使い始めました。詳しくはTagsの「GA645W」をご参照ください。)

(1) GA645Wは、1996年7月の発売で、ちょうど1年前の同じ月,95年7月に発売された「GA645(60mmF4)」の広角バージョンという位置づけでした。
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(2) GA645シリーズは、それまで作られていた「GS645」がレンジファインダーのMFカメラであったのに対し、レンジファインダーをAF化したのを始め、中判でありながらコンパクトで、フィルム送りからAE/AFまで自動化を進めた、レンズ一体型の「中判のコンパクトカメラ」というユニークなコンセプトで、扱いの難しい印象のある中判フィルム用のカメラに親しみやすくアクセスできるという点が評価され、1号機の GA645 は日本カメラオブザイヤーの審査員特別賞を受賞しました。
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(3) GA645Wの特長はレンズ。GA645 では、準広角の60mmF4(35mm版換算で38mm相当)だったのに対し、広角レンズの代表格であるFUJINON SUPER-EBC 45mmF4(35mm版換算で28mm相当)を採用していること。
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(4) このカメラと現在私が愛用している SIGMA のコンパクトカメラ DP1x には共通するアプローチがいくつかあります。
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(5) ひとつは、35mm版換算28mmの広角レンズであること。もうひとつは、その広角レンズをコンパクトに収めるために明るさをF4に抑えていることです。
  (SIGMA DP1x の16.6mmF4)
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  (GA645W の45mmF4)
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(6) そして技術的な特長が、この沈胴式レンズです。
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   沈胴式のレンズはコンパクトカメラなら当たり前の形式ですが、中判カメラで自動の沈胴式を取っているのは、後にも先にもGA645シリーズただ一つです。
 (GA645Wの使用状態。本体内に沈み込んでいたレンズはこのように飛び出します。)
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  (同じくDP1x の使用状態。)
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(7) 沈銅式は、使わないときはレンズの可動部分である鏡筒が本体内に収容されます。
  (GA645Wの沈胴した状態。鏡筒が本体内に沈み込んで周囲の強固なプラスチックボディに保護されます。)
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  (同じくDP1x の沈胴した状態。GA645と同様、レンズの鏡筒の周囲が砲塔の台場のように保護されています。)
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(8) 沈胴式レンズを採用するメリットのひとつがボディが薄くなることやレンズを保護しやすいので持ち歩く用途に適していることなどがあると思います。
GA645Wは、コンパクトなボディに中判フィルムの大きな画面を納めている点が特長で、同じく一眼レフと同様のサイズの大きなAPS-Cクラスセンサーを初めてコンパクトカメラのボディに押し込んだDP1xも同様の狙いでカメラのコンセプト(大きなサイズのセンサー(フィルム)をコンパクトボディに入れる)が練られており、その目的は「運びやすいこと」です。薄いボディはカバンに入れやすく、デリケートな鏡筒が保護されているので、他の荷物と一緒にしても比較的丈夫です。
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(9) GA645の開発の狙いのひとつに、写真の好きな山岳愛好家から運べる荷物の限られた登山バックに詰め込めて、山で少しでも良い画質で撮りたいという要望があり、それに応えるということがあったと聞きます。もともと蛇腹で折りたたみ式のGS645の時代から山で愛用する方の多かったシリーズなので、引き続きその方向で内容が磨かれており、28mmの広角レンズも、それを少しでもコンパクトに収めるためのF4の明るさも、その目的のためにあります。こうした、特定の目的に狙いを絞ってシンプルに作るというあたりが「Professional」の名前に相応しいと思います。
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(10) コンパクトなボディに、645フィルム用の大きなイメージサークルをカバーするレンズとフィルムを納めるメカがびっしり詰まっています。
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(11) そしてレンズ。レンジファインダー式のメリットでバックフォーカスをとても短くとったレンズの後玉は、フィルム面の直前まで迫っています。また、DP1xとも共通しますがレンズシャッター方式を取っており、一眼レフのようなミラーもないのでシャッターを押す際の振動が少なく、低照度でも手ブレに強いというメリットがあります。この辺りは、現在のミラーレス一眼と共通する思想です。(というよりこうした形式のカメラをデジタル化したものが現在のミラーレス一眼の流れですね。)
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(12) レンジファインダーをAF化した三角側距式の距離計部分。赤外式のAFと組み合わせたハイブリッド方式を用いていました。
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(13) 採光窓とブライトフレームをもったファインダー。デジタル化とともに少なくなったディテールです。
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  (ブライトフレーム。AFなので、測距に伴ってこのフレームが動く点が面白いです。)
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(14) バックパネルは極めてシンプル。
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   操作ボタンもこれだけです。中判でP(プログラムオート)があり、ポップアップ式のストロボを内蔵するカメラは、世界広しといえどもこのシリーズだけでは(笑)。
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   液晶の小窓には、フィルムの大きさ(120か220か)、ISO感度、カウンターなどが表示されます。
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(15) 眠っていた機材。久しぶりに起こそうと取り外しておいた電池を装填したら電池が切れていました。眠っていた機材らしいなぁと苦笑。さっそく電池を購入しに行きました。使用電池のCR123Aは、まだカメラ店なら気軽に買える電池です。電池も買ったことだし、思い切って(笑)消費期限の切れたフィルム(Velvia100F)を詰めてみることにしました。120フィルムはもう5本入りの箱詰めしか売っていないので、貴重な1本入りの箱です(笑)。
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  こうして箱の一部をちぎってボディに何が入っているのかを示すというのも、もう忘れられた習慣になるんでしょうね。
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  入りっぱなしになっていたVelvia50から、今回詰めたVelvia100F に交換。これでバッチリ(笑)
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(16) 実に3年半ぶりくらいの、フィルム詰めの儀式。覚えているかなぁ(汗)
フジの120ロールフィルムは途中何度か改良され、この丸い穴をひっかけるだけで装填できるEL(イージーローディングシステム)はとても使いやすいです。
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  フィルムを給装側と巻き取り側に巻き付けて、、、
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  スタートマークが出てくるので所定の位置まで巻き込んだら、後は蓋を閉めてモードをPかAかMの撮影モードにするだけで自動で巻き取ってくれるのが「全自動コンパクト中判カメラ」ならではの儀式。蓋をしたら無事巻き取ってくれました。
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  装填を完了したからには撮影に行かねばなりません(汗)
  120フィルムは645なら16枚撮れますので、頑張って週末にでも撮ってこようかと思います。結果がいかになるかは期待していませんが、少しでも稼働できれば嬉しいです。
  FUJIFILMは現在でも6×7のレンジファインダーカメラ、GF670を出しています。このカメラも伝統の2種類(準標準の44mm相当と広角30mm相当)。思えばDP1xの広角28mmとDP2xの準標準41mm相当の2種類展開というスタイルも、フジフィルムでは長年、セミ版のGS645とGS645W、35mmフィルムのクラッセシリーズなどでも発売してきた伝統のスタイルです。6×7でもプラウベルマキナが、ニッコール80mmとワイドニッコール55mmで、同じように40mm相当と28mm相当のモデルを作ってきました。フジフィルムは、今度デジタルでもレンジファインダータイプを思わせるビューファインダータイプのデジカメを出してきましたが、こちらは35mmF2相当という、私もかつて愛用したKonica HEXARを思わせるレンズで伝統的な様式に則った方針に好感が持てます。フジフィルムにも頑張って欲しいと思っています。
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babathegiantさんのつながり企画が終わってしまったので撮影画像を載せられないのが残念ですが、近いうちに撮ってみた写真をスキャンして載せてみたいと思います。

2011.7.1
SIGMA SD15
RICOH GRD2

※リコーがペンタックスのデジカメ部門を10月に買収すると電撃的な発表がありました。リコーもペンタもまだ愛用中なので複雑な心境です。もともとHOYAはペンタの内視鏡にしか興味がないとサンザン言われてきましたがやっぱりという感じです。しかしリコーは一眼レフを作っていた時代、レンズマウントにはペンタのKマウントを利用していたので、MFカメラ時代、レンズの情報伝達が高度化する前はRICOのRIKENONレンズはペンタのMFレンズ(KシリーズとMシリーズ)とレンズの相互乗り入れが可能でした。そんなご縁もあったことですし、デジカメ市場の競争が激化する中、リコーもペンタもこれを機会に何とか元気に生き抜いて欲しいと願っています。今はSIGMAユーザーですが、カメラ業界全体を応援したい気持ちには変わりありません。
by bjiman | 2011-07-01 07:37 | その他のカメラ・レンズ機材関係
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